手を引っ張る子は、実は一番「伝えよう」としている子かもしれない

心配していたその行動が、実は「一番いいサイン」だったとしたら――。

「うちの子、ことばの代わりに手を引っ張ってくる」 「欲しいものがあると、黙って持ってくる」


このご相談を受けるたびに、私は同じことを伝えています。

それは「困った行動」ではなく、「一番分かりやすい伝え方」を選んでいるだけです。

「え、どういうこと?」と思われた方は、ぜひこのまま読み進めてください。
今日からお子さんの見方が変わるはずです。


「早くことばで言ってほしい」その気持ち、分かります

正直に言います。手を引っ張られるのは、ちょっと大変です💦


外出先で服を引っ張られる。キッチンで足元にまとわりつかれる。
「ちょうだい」の一言があれば済むのに、と思う瞬間は誰にでもあります。


そして、心のどこかでこう思ってしまう。


「このままで大丈夫なのかな」 「いつになったら、ことばで言ってくれるんだろう」

その不安、間違っていません。
実際に「様子を見ましょう」だけで終わってしまうと、変化のタイミングを逃すこともあります。

でも同時に、知っておいてほしいことがあります。

手を引っ張る、物を持ってくるという行動そのものは、発達の中でとても自然な段階だということです。


言語聴覚士が「困った行動」だと思わない理由

専門的な言い方をすると、これは「クレーン現象」と呼ばれます。
ただ、名前を覚えることに意味はありません。大事なのは、その中身です。

一言で言うと、こういうことです。

ことばが出る前の子どもは、「体」を使って伝えています。

手を引っ張るのも、物を持ってくるのも、指差しをするのも、全部「伝えたい」が形になったものです。
ことばという道具をまだ持っていないだけで、伝える気持ち自体はちゃんと育っています。


たとえるなら、まだ電話を持っていない子どもが、直接歩いて呼びに来ているようなものです。
連絡手段が「電話」から「歩いて呼びに来る」に変わっているだけで、「誰かに伝えたい」という中身は変わりません。


よくある誤解:「ことばを教えれば直る」ではない

多くの保護者の方が、こう考えます。

「単語カードを見せて、たくさん教えれば話すようになるはず」

これは半分正しく、半分見直しが必要です。

単語を知っていることは大切な土台ですが、それだけでは「伝える手段をことばに切り替える」ことにはつながりません。

もうひとつ、よくあるのが「叱ってしまう」パターンです。

「ちゃんと言って」 「ことばで言わないと分からないよ」

気持ちはとてもよく分かります。
ただ、これを繰り返すと、子どもは「伝えること自体」に対して身構えるようになってしまうことがあります。
伝え方が下手なのではなく、まだ道具が揃っていないだけなのです。


お子さんの目線で接する、考えること。
それがお子さんの理解につながります。